光が揺らぐ宙吹きガラスの極致、安土草多が創る暮らしの灯りと器
安土 草 多の手から生み出されるガラスを見つめると、水面を通り抜ける柔らかな光の波紋をそのまま掬い取ったかのような錯覚を覚える。岐阜県北部に位置する飛騨高山の静謐な山あいで、炉の熱気と向き合い続ける彼の作品は、日々の暮らしに静かな美しさを灯す。均一さを追求する近代的な工業製品とは対照的に、揺らぎと温もりを湛えたその表情は、多くの工芸ファンの心を掴んで離さない。
透き通る無色の中にわずかに帯びたアンティークのような黄褐色と、不揃いな気泡が描く独特の陰影。現代のガラス工芸界において異彩を放つ安土 草 多のガラスは、食卓に並ぶ和食器とも驚くほど自然に調和し、空間全体の空気をふわりと変えてしまう力を持つ。
飛騨高山に根ざすものづくり:父・安土忠久から受け継いだ工芸の血脈

飛騨高山の大自然に抱かれた安土草多ガラス工房。ここで生み出されるうつわやランプシェードには、土地の静けさと手仕事の熱量がそのまま封じ込められている。
安土草多の原点を語る上で、同じくガラス作家である父・安土忠久の存在は欠かせない。父が築き上げた独自のガラス表現を間近で見つめ、幼少期から素材と戯れて育った彼は、やがて自らの表現手段としてガラスと対峙する道を選んだ。柳宗悦らが提唱した民藝運動の精神、すなわち「日々の生活で使われてこそ美しい」という思想は、日本民藝館に並ぶ名品の数々とも共鳴し、草多の制作における揺るぎない土台となっている。
工房の扉を開ければ、真っ赤に熟れた熔融ガラスの芳醇な熱気。道具を操る研ぎ澄まされた手さばきから、唯一無二の造形が紡ぎ出されていく。
光と揺らぎを生む「宙吹きガラス」:計算と偶然が織りなす造形美
彼の作品を決定づけているのが、型を一切使わずに空中で息を吹き込んで成形する「宙吹きガラス」の技法だ。
重力と遠心力、そしてガラスの冷めゆく刹那の粘度を読み切りながら、瞬時にフォルムを導き出す。機械のように正確無比な円や直線ではない。わずかな厚みのゆがみや、意図して残されたような微細な気泡が、外光や照明を受けたときに乱反射を起こし、壁やテーブルに美しい揺らめきを描き出す。
ガラス工芸の魅力は、透明感と無機質さだけではない。手作業だからこそ宿る温かみと、光の陰影に宿る情緒。安土草多の手吹き硝子は、その矛盾するふたつの要素をごく自然に同居させている。
空間を一変させる名作ペンダントライト:日常に溶け込む陰影の魔法

近年のインテリアシーンで圧倒的な支持を集めているのが、アイコニックなペンダントライトだ。
明かりを灯した瞬間、部屋の空気が一変する。シェードを透過した光が壁面や天井に落とす波のような文様は、まるで夜の海辺や森の木漏れ日を眺めているかのような心地よさを運んでくる。角型、八角、球体、あるいはひび割れのような表情を見せるクラック加工など、デザインの幅広さも魅力のひとつだ。
北欧家具やヴィンテージの木製テーブルに吊るせば、静かで上質なアクセントに。主張しすぎることなく、空間にそっと寄り添いながら、住まう人の日々に安らぎを与えてくれる。
和食器とも寄り添ううつわたち:料理を引き立てるガラスの温もり
照明と並び、彼の代名詞となっているのが日常使いのうつわ群だ。
グラス、小鉢、片口、平皿に注がれるのは、冷たい飲み物や季節の料理だけではない。土の質感豊かな陶磁器や漆器といった和食器の中にぽつんと置かれた硝子鉢は、テーブルコーディネート全体に瑞々しい抜け感をもたらす。
少し無骨で、厚みがあり、手に取るとずっしりとした確かな重み。冷涼なイメージの強いガラスでありながら、手に触れたときにどこか柔らかさを感じるのは、手仕事で作られた肉厚なフォルムならではの妙味だ。
【2026年最新】安土草多の個展スケジュールと取扱店・通販徹底ガイド
年々高まる人気に伴い、作品の入手難易度は上がっている。ここでは2026年に向けた最新の個展情報と、信頼できる取扱店・オンライン購入ルートを整理した。
まず実物をじっくり選びたいなら、全国の工芸ギャラリーで開催される個展や企画展に足を運ぶのが一番の近道だ。首都圏や京阪神の主要ギャラリーでは年に数回、新作を揃えた展示会が開催されており、作家本人と対話しながら選ぶ贅沢な時間を味わえる。個展の開催スケジュールは工房の公式案内や提携ギャラリーのSNSで随時告知されるため、見逃さないようチェックしておきたい。
オンラインで購入を検討している場合は、全国のセレクト器店や工芸セレクトショップのウェブストアに加え、ハンドメイド・クラフトマーケットの「iichi」や「Creema」にも注目したい。入荷と同時に品薄となるケースが多いが、定番のグラスや小鉢、人気のペンダントライトがピンポイントで出品されることがある。お気に入り登録や入荷通知機能を活用すれば、理想の作品を手に入れる好機を逃さずに済むはずだ。
用の美を現代に宿す:暮らしを豊かに灯す手仕事の価値
工業製品の完璧さとは対照的な、安土草多の生み出す手仕事のゆらぎ。それは飾っておくための美術品ではなく、毎日の朝食で水を飲み、夜に灯りを点けてくつろぐ、そんな日常の所作の中でこそ真価を発揮する。
飛騨高山の工房から届く光の器。そのひとつを暮らしに取り入れるだけで、何気ない一日がほんの少し愛おしいものへと変わっていくだろう。 (出典: 安土 草 多(Yahoo!ニュース))